ねこの墓

mklasohi2012-05-04

久しぶりの授業でした。
昨日午前中は、4年生の女子学生2人と湖北美術館で開かれている小さいアニエス・ヴァルダ(AGNES VARDA)の展覧会に行ってきました。

アニエス・ヴアルダは1928年にベルギーのブリュッセルで生まれた女性写真家・映画監督で1957年29歳のときに中国に来て数千枚の写真をとっています。50有余年を経て83歳でも活躍している。
今回の展示をよく見ると「中ソ友好…」と両門に貼られた対聯のある家の写真などがあった。写真の中の子どもたちの中国服が可愛い。
特に前から知っていたわけではなく、北京の中央美術館ではたまに世界のドキュメンタリー映画を上映することもあるので、湖北省美術館でもそろそろ何かフィルムものをやるのではないかとチェックしていて見つけた展覧会。
ドキュメンタリー映画の上映はありませんでしたが、それでも3−4つのフィルム作品もあり、一つはハートの形をしたジャガイモに美しい芽が生えてくる様を追ったもの、そして海辺に寄せかえす波の映像、53年前の家族の後ろ姿、それから私がもっともすきだったのが「zigougou」という愛猫のお墓の作品。中国語では「茨古古」と書かれていた。右の写真がそうです。


海へは歩けば20分ぐらいのもあるだろうか。砂のような土で作られたねこのお墓。再現されたそのお墓の土の上に、きれいな色と形の貝殻が映像で並べられていく。そして最後に壁の蔓に美しい花が開いていく。

その意味するところは、死や別れはもはや悲しいだけのものではない、心に持ち続ける花や貝殻を美しく温かく並べていく対象ということ。供えるということの永遠。
ふと、夏目漱石が「硝子戸の中」で愛犬の死に対して「風の聞こえぬ土の中に埋めてやりぬ」と詠んだその土の温かみを思い出した。

見終わって展示室の出口あたりにコメントを書き記すためのスケッチブックが置いてあった。
難関をくぐりぬけて江蘇省の公務員試験に合格したPさん。日本留学のお土産を買ってきてくれたことがあった。そのメモを見ると、「卒業間近にこんなよい思い出をありがとうございました」と書いてあった。

別れに贈る私からの小さな心の花束…。
受け取ってもらえたようでした。