2つの榮寶齋

mklasohi2008-08-04


武漢に流れる長江ファンの皆様。暑中お見舞い申し上げます。
用があって、漢口へ行ってきました。写真は皆様(私)が愛してやまない今日の長江です。

さて、今日の物語は少し長めです。長い時間を経て2つの店が私の中で出会うお話です。
今日は午後、先日、アンケートをとって送ってくれた某女子大教授の友人へのお礼に、彼の「生まれたばかりの娘」の印鑑を作りに行ってきました。
何か入用なものはと聞いたとき、「娘の印鑑」をと返事が来たが、さて、どこに印鑑屋さんがあるのかと考えても思いつかない。学生たちは殆ど大学にいないし、いたとしても知らないだろう。誰に聞こうかと思いつつ、漢口ならありそうと、たまたま中国ヤフーでチャットのできる武漢市政府友好協会の知人に尋ねたのだった。するといろいろと聞いてくださり仕事中にもかかわらず(!)今日午後連れて行って下さることになった。(その間さすがに、ずっと携帯にかかるひっきりなしの電話に対応だった。)

大学があるのは武漢三鎮の武昌側文教地区。黄鶴楼、武昌決起が起こったのも武昌側。武漢市政府があるのは長江をはさんで対岸の漢口。バス等乗り継いでいけば大学からほぼ1時間半見ておく必要がある。今日は長江をわたるのに橋を使わずフェリーを使った。市政府まで距離的にはこのほうが近い。
 市政府は租界のあったところにあり、もとドイツ領事館で白く明るくかつ威厳のある建物が広々とした敷地に建っている。緑の木もそよいでいる。直立不動の警備兵が門の両側に立っていて普通の市民にはとても敷居が高い。
だが、中に入ってまず休んでいくよう電話をもらったので、その直立不動の若い門兵さんと問答、中から電話をかけてもらって入れてもらった。洋館の広い敷地の奥の建物に行く。行くのは2度目だけれどやっぱりなんとなく敷居が高い雰囲気がある。
彼女が仕事を片付けるのを待って、一緒に漢口のディープな街へ。近くには日本街もあったところで、武漢語もこのあたりが正統なものと言われていて、漢口文化を感じさせる一帯だ。市政府の傍からバスに乗ると、バスの中も白シャツ短パン、革靴という武漢の昔ながらの夏の「盛装」のおじいさんたちがたくさん乗っていた。江漢路に向かって3つ目の停留所でおり、信号のない通りを渡り、その店を探す。どんどんと新しい建物に立替られている武漢としては、古い建物で看板もないから連れて行ってもらわなければわからなかったと思う。

中に入ると、書画用品などが売られていて、店の入り口に近いところに印章のための石を並べたウインドーがある。すでに電話をいれてくれてあったので、お店の方も来意を承知。
象牙もありますよ」ということだったが、輸入禁止品のはずだし、動物愛護という禁止になる理由もあるわけなのだから、白には引かれながらも、石のウインドーを見ると、真っ白で綺麗な石が目に飛び込んできた。石の名前をきくと「寿山石」。
白紙のような白の色も、生まれてきたばかりの人にふさわしいし、石の名前はこれからの長い人生の山を越えていくことを象徴するようで直ぐに気に入った。

次は文字と字体選び。独断個人的趣味だが、可愛くて楚々とした女性になるよう細くて面白い線のもの、お嫁に行っても、一生使えるように、苗字は入れず名前だけにして、それから干支のねずみを小さく入れてもらうようお願いした。というのもそんなデザイン見本が可愛かったのと2文字の名前だけではちょっと間延びしそうだったから。さて出来栄えが楽しみだ。

2日かかりますいうことだから、名刺をもらって帰ろうとしてびっくり。「武漢・栄寶齋」とある。北京の瑠璃廠という書画骨董屋街にあるお店の分店なのだ。北京の「栄寶齋」といえば、大学院を出たばかりのとき日中の友好団体につとめ、北京の友好協会の方に連れて行っていただいた思い出のある店だ。3年前の秋、一人で思い出をたどって訪れた店でもある。遠い夏8月、北京の故宮人民大会堂日中友好の記念行事を中日友好協会の方々と行った。中国がまだまだ質素な共産主義国だった頃だ。
今回はなんと武漢の友好協会の方に連れてきていただた。偶然ながら、何か不思議な時計がぐるぐるっと回って白いはんこになって私の手のひらにのっかったかのよう…。
胸にしみる思いを友人が大きくなった娘さんに話して聞かせてくれるまでに何年かかるかな。
2つの榮寶齋。はんこができあがるのは2日後。