夜の牛肉ラーメン店

街に出た帰り牛肉麺の店に寄った。ちいさい間口の、テーブルが6つほどの店。入るときにはやや勇気が要る。
注文すると寝かせてあった生地の小さい塊をとって揉んで伸ばしてくれる。1本が2本、2本が4本…2の倍数の束が大なべに放りこまれて茹でられる。あつあつの麺の上にスープをかけて出てくるまでに5分もかからない。
 スカーフを巻いた20代の店の奥さんが赤ちゃんにおっぱいを飲ませている。10歳くらいの男の子も店を手伝っていて沸いたお湯を魔法瓶に入れている。
 若い主人も麺を作り終わるや奥さんの座るテーブルに戻り、私の頭の上にあるTVを見上げている。おっぱいを飲み終わって、赤ちゃんまでもTVを見上げている。
 そっとどんぶりを置いて外にでて振り返ると、TVを見上げたまま男の子がどんぶりを下げて行った。
永遠に続くドラマ…。何も慌てることがない世界。