都市の印象

　人は美しい場所を汚そうとはしない。中国も大都市になればなるほど、ごみをあたりかまわず捨てる人が少なくなるように思う。
長春への汽車の中で向かいに座った30代の女性がいきなりつばを床に吐いて、足でもみ消すのをうわ〜と思って見たが、私たちが次の駅で下車しようとしているのを知ると、隣の席のおばあさんが、「あんたたちが降りたら、横になるから、立ってる人たちを座らせないでくれ」と言うから、これまたなかなかです。香港のあちこちで、「痰を吐いたら最高5000香港ドルの罰金」といったような注意書きを見かけたが、返還以降の内地からのこのアナーキーの流入を必死に防いでいる証だろう。（写真は仮想図のような香港のビル）
北から旅をして、７〜８都市を駆け足で歩いたが、大都市の住宅事情は高層化によって、かなり快適なものへと、おそろしい勢いで変化しているように感じる。建築ラッシュに合わせて、内装のための「環境に良い住宅建材」と宣伝する看板などもよく目にする。
香港や深センは言うまでもなく、瀋陽、大連も大都会で、その都市としての特徴と美しさを兼ね備えた景観を考えると東京ももしかすると敵わない部分がそれぞれあるように思う。大連には森ビルも触手を伸ばしていた。
実は23年ぶりの中国。まるで愛した人を探す旅に出て、その人の座った椅子しか残っていない街を彷徨っているような、そんな気もした。
秋雨のような雨が降っている。