走れアキラ

mklasohi2013-01-07


昨晩恒例の日本語学科忘年会が開かれました。ことしは年が明けてからの会だから「新年会」。
話劇は1年生は「ねずみの嫁入り」、2年生は「武林外伝」と「走れメロス」。毎年学生たちと脚本を作ります。
走れメロス」で活躍したのが、アキラ君。昨年9月電気学科から転部してしてきた学生です。かれは独学で日本語を勉強し、すでに1級を取っていて、「四苦八苦」とか難しい単語を知っていますが、何しろ独学ですから、話し方は当初、ちょっとはちゃめちゃでした。それで二年生に転入なのです。
この大学は総合大学とはいえ、母体は理工大学ですから、理系がなんといっても天下に轟く名門。日本語学科の学生もじつは理系に行きたかった学生が大半で、逆の転部はいままでもかなりありましたが、理系からの転向は初めてで、皆もったいないと普通は思うし、ご両親も大反対だったろうことは容易に想像できます。それでも、日本語学科へと思ったのは彼の日本や日本語への強い愛着からでしょう。
9月初め、クラスの中の機会均等を大原則としている教師としては、積極的過ぎて、他の人にチャンスをあげてね、と言わざるを得ない場面があったり、「ぼくって、アイスクリームが好きです、ウフッ」で、あわわ、アニメお宅かしらんと。つまりなじむのにやや時間が必要でした。
2年になると日本語の名前つけをするのですが、彼の名前を訓読みしてアキラはどう?と言うと「はい!先生のつけてくださったこれにします!いい名前です!」と嬉しそう。(そういう有名なアニメもあったなぁ。)

秋が来て、枯れ葉が舞い、冬が来て、震え、新年会を準備するシーズンに。

2年の劇は2つ。中国の「武林外伝」。これコメディーなのでもう一本、太宰治の「走れメロス」をやってみようと提案、オリジナルは長いので、要約を皆に読ませ、やはりしっかりした物語があることに学生たちも魅了されたようでした。古くて新しい試み。
アキラ君はここで、主役「メロス」に手を挙げました。脚本は彼と、女子学生「ゆきこちゃん」が書きました。彼女は深夜遅くまで、原文に当たって考えました。それを、もう一度、時間配分や効果を考え、2度見なおし、練習を重ねて、できたのが昨日のお芝居。
実は昨日アキラ君は司会もやったし、脚本もやり、主役では、原則から言えば、出過ぎ。しかし、彼のこの気持ち、活躍を是非ご両親にお見せしたい、このやる気を感じていただきたいと、写真もたくさん撮りました。

山賊との立ち回りはすこし孫悟空風だったけれど(笑)、メロスの友情物語、よく走り切りました。もちろん、他の役の学生たち、ことに普段口が重めの男子たち、たとえば哲君の見事な演技にわたしは、見ていて心から満足でした。それは、「成長」を見せてもらっているからです。なんだかそれだけでいい。本当にそれだけでありがたい。

夕べは、また、日本人の方がお正月帰省や、留学生はテストということで、ご参加がこの8年間で一番少なかったのですが、武漢の日系銀行の副支店長0様が、とりの歌のサビに入って盛り上げてくださいました。


ひとめぐりして、シンプルな楽しさを味わった気分です。

冬の光の中にある春の粒。

今日は昼の並木を歩き空を見上げながら、冬をぬぎすてて、あの学生たちみたいに、すこし成長したいなぁ、と思いました。