星が流れる

今夜はペルセウス流星群が極大になると高校の同級生が教えてくれた。

今日は何の脈絡もなく、つい読んでしまった俵万智さんの歌集「プーさんの鼻」(2005年文芸春秋)のこと。

シングルマザーの道を選択された頃の、生まれ来る子どもへの歌や恋の歌、定年の父上、結婚する弟さんのことなど。「愛しい人との出会いに感謝しつつ、三百十四首を、本集のために選んだ」と後書きにあります。その歌集からいくつかを。

海底を走る列車の音がする深夜お前の心音を聞く



もう会わぬと決めてしまえり四十でひとつ得て一つ失う我か
三文小説に三文の値打ちあることを思いて人と別れ行くなり
大花火のフィナーレのごとく口づけて見えないものを抱きしめていた



ブーケトスおどけてキャッチする我の中で何かが泣きそうになる
他人から見える幸せ一身にまといて光る電飾の家



初対面の新記者にきかれおりあなたは父性をおぎなえるかと
悪気なき言葉にふいに刺されおり痛いと思うようじゃまだまだ



誰が教えているのだろうか右足の一歩の次は左を一歩
何度でも呼ばれておりぬ雨の午後「かーかん」「はあい」「かーかん」「はあい」



別れを決めて、子どもの成長を見守る一言一言。いうほどに楽ではないことを引き受ける強さ、賢明さ。自分の始末がつけられる人が詠んだ歌と感じました。もう一首。


やがてくる命を待てば逆光に輝きを増す隅田川見ゆ


キラキラと川面の反射、「新しい命という希望」が見えます。


さて、今夜は月夜に星が流れるを見ゆ、か。
移ろいゆくものの記憶に残る花火のように。