絢爛の春 絢爛なことば

最近時間があるとき見ているのが「大明宮詞」。唐代の則天武后とその娘太平を描いたドラマで2000年に放映されたもの。脚本家はシェークスピア劇の風格でそのシナリオを書いたと言われ、言葉の美しさや衣装の華やかさなどが話題になったドラマだ。勿論研究の一環でその言葉づかいに注目してみている。
全編、成語や詩的な語彙が使われ一部書き言葉的だとも、きらびやか過ぎるとも言われるが、おもに女性には大変人気を博したようだ。たとえば、第7話に怪しい覆面の道士がでてきて、公女・太平(タイピン)の未来を占うが、その道士が彼女を宮殿の池の端で見かけたときの記憶として語る言葉が、

「一池春水 池中養花 璧波青蓮 蓮下魚有 赤尾銀身 嬉戯成趣 池中泛舟 舟借水勢 水就風勢 破波徐行」 

一面の池 春温む水 池の中には花を養い 碧い波、青き蓮 蓮のもとには魚あり 赤き尾 銀色に光る鱗 戯れておもしろき 池に舟を浮かべれば 舟は水の勢いを借り 水は風の勢いに就き 波を破りて徐ろに過ぎゆく…

ああ、まるで漢詩を読むようで思わずうっとり。

ついでにつられて太平(タイピン)の初恋相手を演じる趙文宣(ウィストン・チャオ)も好きになった。台湾の俳優さんで10数年まえ「ウェデング・バンケット」では同性愛者を演じ、英語もお上手。「宋家の三姉妹」では孫文役。昔どちらも見たのに全く印象になかった(笑)。今年は巴金の小説「寒夜」がドラマ化され主役を演じている。これもお店のおじさんのお勧めだったので買ってきた。「大明宮詞」の後半では、趙文宣はジゴロと二役だそうだが、どうなることか。
文学者・郭沫若は「現実主義はあったことを書き、ロマン主義はありそうなことを書く」と言ったそうだが、歴史の真実も、語られた言葉も見に行ける人はいないのだから、言葉の上では何がそれらしいいのか、らしく感じるとは何か、それが私には面白い。

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