こがらしの夜に

コートを着ていても寒風が差し込んでくるし、窓の隙間からも凍った風が入り込んでくる。気温‐1度。
木曜日にウルムチでお世話になったIさんが武漢に寄って下さった。ウルムチからすでに40時間近く揺られ、武漢で一泊して、次の日広州へまた10数時間、出張の旅だ。
IさんはA先生のお母さんの友だちで、広播(放送)大学の部長。お世話になったときはご自宅には、小学校の先生だったお母様とその同僚の先生、大連の大学から夏休みで故郷へ帰る途中の友達の娘さん(30時間の旅のあと、ウルムチで1泊、草原の故郷を目指していた)、弟さんの娘さん(足の手術で来ている)がいて、そして外国人の私が加わった。幾人もの旅の食客を面倒をみる昔の中国の豪族を思わせた。
その後も携帯に折につけメールを送ってくれた。夏に東京に行かれたときは入れ違いで会えなかった。国が違っても心の隔たりを感じない人は貴重だ。
A先生のお母様と武昌駅の傍のホテルを訪ねると、シャワーを浴びてタオルでふきふき出てくるや中国人女性同士の笑いや懐かしさがはじける。生きたことば、少しだけウルムチ訛り(ふふ)。同行の先生がお2人。
驚いたのは40時間も揺られながら、私には想像もしなかったお土産をいただいたこと。お手製の「小被」という小さめの布団と、ウルムチ名物の干し果物。小被はTVを見るときやちょっと転寝するときなどに使って、と広げて見せてくれた。中の綿は新疆の特産の綿。それをガーゼのような布で来るんで一針一針縫って作ったもので、その上にカバーがかけてある。
新疆の綿は陽に干せばすぐ膨らむ。確かに羽毛のように軽い。「最後に中国から帰国するときにもこれはもって帰ってね」と念を押された。私の部屋には暖房もあるが、武漢も零下になった今日はぐるぐる巻きにして机の前に座っている(みの虫)。
今夜は日本の友だちが送ってくれたお米も炊いた。別の友だちが「クリスマス用」と贈ってくれた靴下もちょっと早めにつるしてみた。

<最後に帰国するとき>がいつかはまだはっきりとはわからないが、そのときは丸めてもって帰かえろうと思う。