思いを致す

mklasohi2008-10-26


2年前お部屋の掃除に来てくれていたシャオリュウが「後勤集団10周年記念演芸会」のチケットを取ってくれたので今夜見てきた。

後勤集団とは大学内のホテル・食堂・スーパー、施設設備を管理・運営(経営)する組織。10周年のお祝いだから、清華大や北京大の後勤集団のお偉いさんも来てシャオリュウはお茶を出す係を仰せつかったそうだ。
「踊りに出たかったのに」というので「美人でお茶の出し方も良いからでしょう」と答えたが、じっさい彼女は服務員さんの中でもとても女性らしくて可愛い人で、来てくれたときはいつも心地よく接してくれた。
夜7時開演、東キャンパスの韻苑体育館。演目は踊りや二胡の演奏、物まね、漫才、歌などだった。
楽器演奏や漫才は国家一級演芸師などの肩書きを持つ武漢の玄人さんたちがやってきた。物まねは湖南省なまりの毛沢東の「中華人民共和国成立了〜」から始まり江沢民の物まねは顔までそっくり。漫才の雰囲気は日本の寄席によく似ていた。庶民の味。
想像していたよりディープな体験だった。いままで行ったクラッシックコンサートにしてもキャンパス内の活動にしても、観客はまったくの庶民というにはやや違っただろう。今回の観客は後勤の従業員の人や家族。まず体育館に入るなり雰囲気が違う。服装なども違う。ざわざわと聞こえてくるのは、武漢や近郊の濃い発音。あれほど方言集団に囲まれたことは初めてだ。さすがにあの場所にいた外国人は私一人だろう。激流中国に一人漂流する気分をちょっと味わった。これは予想していなかった。確かに服務員さんの月給は600元ぐらいというから、洋服にしても高級なものということはないのだろう。チケットに書かれた座席指定は入り口警備の人が見るなり破り捨て、はじめっから無視だった。
そんなことを感じながら、若い従業員さんたちの踊りで深く心に響いた出し物があった。ひとつは「餐飲(飲食)交響曲」という短い音楽劇、それから中国カスタネット・快板を鳴らしながら踊る踊り「後勤頌(後勤賛歌)」。
音楽劇は後ろで後勤集団の一日の仕事がスクリーンに流される。見慣れたキャンパス内の並木道が映る。まだ真っ暗だ。街灯の明かりに照らされた道を自転車が走る。
食堂の準備は朝3:00から始まるのだ。粉を打って肉饅頭を蒸かす、大量の野菜が刻まれて、大なべが炎の上で踊る、学生たちは全寮制だから数万人の朝ごはんは夜まだ暗い時間からつくり始められるのだ。
当たり前のことなのに、まな板の音が、枕の傍に音が聞こえなければ、なかなか思いを致すことはない。
食堂のおかずがやや油っぽいとか、また赤い水がでたとか、停電だとか不満を並べる立場にいると午前3時の苦労に想像力が向かうことは難しい。いろいろな人の手によって成り立つキャンパスライフ。

これからはもうちょっと想像力を働かせて道を歩こうと思う。シャオリュウ誘ってくれてありがとう。
休憩うさぎ、また明日から脱兎かな。