「千年の祈り」

mklasohi2008-10-29

雨は物憂いいたみにも似て…。

荷物が届いていますよと促されてキャンパス内の郵便センターに取りに行った。夏に帰国された某老師がお菓子やコーヒーなど送ってくださったのだ。宝船。箱を開けて嬉や、ご当地の和菓子。さすが一粒に込められた丁寧さが違う。感謝、感激。
また前日は、もと英字新聞の記者だった友だちが送ってくれた本が届いた。アメリカ在住中国人作家イー・ユン・リーの「千年の祈り(A Thousand Years of Good Prayers)」、翻訳版。ヘミングウェイ賞、プッシュカート賞、フランク・オコーナー賞など各種賞を取った短編小説集である。私の好きなインド系アメリカ人作家ジュンパ・ラヒリの短編と同じような味わい。
標題の短編は、アメリカに住む離婚した娘を心配して北京からやってきた父親とその娘との葛藤を描いたもので、中国語の「修百世可同舟」(誰かと同じ船で川を渡るには300年祈らなければならない)という言葉からとったタイトルだそうだ。調べるともとは「白娘子伝」にある言葉で、千年生きた蛇の化身・白娘子が人間を愛し、結ばれ、仲を引き裂かれてしまうといお話にでてくるというから、男女の縁を意味していたが、いまでは様々な人との縁をたとえて使うようだ。人と人は長い長い時間、祈ってやっと出会う。
そうしてみると、日の出る国から宝船や美しい物語を送ってくれる方々などとの縁は、まるで身内との縁の代わりともいえる。
今生に出会う人は、役割が代わって、過去やらまたいつか未来で出会うとも聞く。傘を差して雨に濡れるこんな日の自分はいったいいつの時代の誰なのか、朦朧とした雨に取り囲まれてずいぶん模糊としてくる。
雨は物憂いいたみにも似てかつ優しさにも似ている。