今夜の幸せ

夕方宿舎に戻ると、アメリカ人の先生二人が立ち話。ハーイと言って立ち去ろうとすると、女のR先生が、最近お香か何かいい香りがするんだけれど、なにか炊いている?といわれるので、いいえ特別にはなにもと答える。東京の家ではユーカリやサンダルウッドなどのアロマオイルで部屋をいい香りに満たして眠るのが好きだが、液体は持ってこれないので中国の部屋にはない。
別れて部屋に入るや、ベランダに向けて開け放たれたドアの向こうに、金木犀の花。あ、これだ?と引き返して、金木犀、中国語では「桂花」という、窓のまん前にあって今が花盛りですよと教えた。
2人ともそんな木があるとは知らなかったそうだ。窓を閉めていても、いま夜気と一緒にうっすら香ってくる。いい香り。朝は、門衛のおじさんがビニールを敷いて、花びらを集めていた。短い秋の幸せ。
お風呂から上ると、北京大学の大学院に行った卒業生BBさんから電話があった。久々で話し込んでしまった。北京はやはり様々な機会にめぐまれ、北大の本の所蔵量は中国第三位、清華大に有名な学者がやってきて毎週末講演会、見つけたアルバイトはHNKドキュメンタリーの翻訳…なのだそうだ。
大学から3000元の補助がでたからご馳走しますって言ってくれたが、それは本を買うお金ですよと断った。
次に北京に行くときは思い出をたどって探したい人もいる。
金木犀の香りと「いつ来ますか」と言ってくれる人がいることは今夜の幸せ…。