春風又緑 江南岸

自転車で坂道を下りると風がコートの裾を翻す。目に映る景色が薄紅色の花と、薄緑の大地に変わり始めた。
「メールを見てうれしくて興奮しました」と深センに就職したY君が電話をかけてきてくれた。24日から香港の学会に行くので、深センを経由するけど会えるかとメールした。彼とは約2年ぶり、もう一人去年の卒業生Yさんも飛行場まで迎えに行きますよと言ってくれた。朋がいて、遠方へ旅をするとき会えるのもまた楽しからずや。私が不在期間中の学生たちの課題は用意した。7月に補講もするということで日本語学科もOKしてくれている。
香港には年若き先輩がいて、2月の終わりにこの会議について知らせてくれた。斯界の大家の基調講演もあるし、新しい研究を眺めるよいチャンスだ。香港は繁体字を使っているので、学会プログラムを読むのに目が慣れなかったが、繁体字が踊る香港の地図も古い中国に旅するようで新鮮。

忙しくキャンパスを駆け巡りながら、春風がひと吹きするたびに優しい緑に染まっていくのが目に映る。春風又緑江南岸。王安石の見た春もこんな春の姿だったのかどうかはわからないが、こんな季節が好きだなと思う。