帰る人、残る人

mklasohi2008-02-23

朝、Hj君を武漢・天河飛行場に見送った。大きなスーツケースにはお父さんやお母さんへのお土産と、それから心にも、武昌出身の4年生Cさん、早めに学校に戻ってきた山東省出身Ti君、漢口育ちLinさん、その友だちG君、彼らと歩いた武漢の街の思い出が詰まっていることだろう。
旧租界や発展著しいこの大学の付近などを私も一緒に歩いたが、忽然と消えた古い小さな通りに私自身、道を間違えて驚いた。まるで50年を一気にぶち壊すようなスピード。これが全人代で決まった武漢「試験区」の勢いということか。
朝送った後、一人になって荷物もないのでリムジンに乗って武昌のバスターミナルまで戻ってきた。リムジンが長江を渡るとき、若いお母さんが2―3歳ぐらいの男の子を膝の上に乗せお話を聞かせている声が聞こえてきた。「かえるのヅゥヅウ」が主人公だ。小さい男の子の青いセーターにはあひるの絵。どこでも母親はこんな風に優しい声で子供に話をして聞かせるものだ。バスのカーテンに薄日があたり、その向こうに長江が流れている。
ターミナルでは新学期の学生の波は昨日がピークだったはずだがそれでも人が大勢でバスにもタクシーにも乗れない。降車場の位置も微妙に以前とずれている。新聞、糖フール(サンザシ飴)が埃と排気ガスの中で売られている。
703番バスが来たので乗りたいと思ったが、農民工風のおじさんが斜め後ろから手をぐっと突き出し自分だけ乗ろうとするので、かよわい?私は押しのけられてしまった。やるなっぁと思った瞬間、ぎゅうぎゅうとドアが閉じられおじさんさえも盛りこぼしてバスは行ってしまった。激流中国、13億人民の波の中に紛れ込んだ気持になった。  
乗り換えたバスの中で小さい男の子がきれいな声で民謡を歌っていた。声を褒められて歌うことが好きになったのじゃないかな。春の森で鳥がさえずるような声だ。お母さんも止めはしない、自慢の息子。子どもはほめられて育つべきですね。 
帰る人と残る人。残る私はこのたくましい人たち、心優しい人たち、若い人、老人たち、そんな風に大きくなっていく人たちとまた暑い夏までひと頑張りするのだわ。