奇遇

東キャンパスで授業を終え、急いで西へと自転車を走らせ、色づいてきた鈴かけの木の下に止めていたら、あれ?となりで「四川省君」が自転車を止めようとしている。物理の授業がこの西5号館であって、自転車は早速100元で中古を買ったそうだ。「私は今日は先生なのよ」。
授業終了後ホールへでるとまたもやばったり。5万人の学部生、1万7千人の院生。待ち合わせでもしない限りこうも出会う確率はかなり低い。お昼はどこで食べますかと聞くので、昼食をともにすることにした。
 食べたのは火鍋。高菜と魚、お豆腐それに唐辛子と花椒が嫌と言うほど入っている、ぐつぐつ煮えるうちに堪えられないほど。四川省君は「あんまり辛くないですね」と言う。え?四川省の人ってどんな物を食べているの。
 鍋を食べながら夢を語ってくれた。中国の激烈な競争に勝ってよい仕事に就くのは容易なことではない。彼は起業を目指して独立心を養うため、すでに親からの仕送りも断り、家庭教師などで稼いで自立しているのだそうだ。
 中国の有名大生は勉強時間を優先させるため、送金を断ってまでアルバイトをするという例はかなり希少だ。目標は投資会社の設立。
 「日本のお相撲さんってどうしてあんなに太っているんですか」とか言いながら辛い鍋を平らげていく。細身の20歳の中にある伸びのあるポジティブな精神。
 中国には雇用の創出が大きな課題としてあると思うだけに、他の人のためにも四川省君が描く計画が叶うといい。