基本的な幸せ

 西瓜が地べたに山積みで売られている。中国に来て、冷えていない西瓜も食べられるようになった。レストランでビールやジュースを注文しても指定しない限りは冷えていないものが出てくる。それでなくても飲めないタイプで、ぬるいビールはありえないなぁと当初思った。でも、それはそれで慣れてしまうものだ。西瓜のみずみずしさがただ喉を潤してくれる幸せが基本的な幸せなのだと気づく。
昨日も38度と予報が出ていて、先週あたりから教室で冷房がつけられるようになった。確かに多少ないとみんな茹ってしまう。でも、教室によってはちょっと行き過ぎの冷風。古い教室にもエアコンが置かれ、PCも使えるようになったし、この1年で電化も進んでいる。
おとといは試験中、警備係のお兄さんが入ってきて「節約のため電気を消してカーテンを開けてください」というので、電気を消すのはもちろんOK。でもカーテンを開けると、硝子窓を通してものすごい熱気が伝わってくるからカーテンは開けない方がいいと言おうまもなく出て行った。
昨日は講義を聞きに行くと前の席の女子学生がかばんから蚊取り線香を取り出し、火をつけ足元に置いた。「蚊も暑くて死に絶える数週間」があるというから、今のうちとばかりに、目の前に飛び交うので集中できない。手を振り回していたら、蚊取り線香をポキンと折って渡してくれた。蚊取り線香をバックからとりだす女子学生というのは日本の大学ではいないでしょうねぇ。日本の方が洗練されたマナーであることは多いが、折って差し出す人情を自然に表せる人たちだと思う。
5月の連休明けからは、午後は2時半からになった。朝の8時から12時まで、それから昼寝をして2時半だ。私も15分ぐらい横になることにしている。木陰の下でおなかを出して寝ている人も見かける。
暑いといって、家族や友人たちと一緒に西瓜を食べる、基本的な幸せが幸せと思う。夏をしのぐやり方にもそれぞれ文化があるのだし、せいぜい、基本的な幸せの一歩先ぐらいのよい頃合に収まるといいなと思う。