頑張る甲斐

 仕事の重なり具合についてはもう愚痴るのが面倒なほど。その一つが今日の学校開放日だった。これは1年に1度近隣の中高生に大学を開放する日であり、未来の学生たちに大学・各学部をアピールする機会だ。
 去年の今頃は反日運動の一番激しかった時期で、ここ武漢でもデモがあり、外出さえ控えたほうがいいと噂され、学生たちに頼まれ一応参加したものの、さすがに日本人を表に出した活動は控えた。それから一年、小さい反日の感情にはぶつかっても来たが、今日は昨日の雷雨も止み、見る見るうちに晴れ上がり、貸していただいた浴衣を着ても大丈夫なほどの気温になった。やると決めた以上は形から入るタイプ(?)、浴衣効果はやはり高い。
 日本語学科は去年、前年の3分2に減っている。今年は先生方も学生を増やしたいとおっしゃっていた。ならば正攻法。日本語に興味を持ってもらおうと、1年生といっしょに、50音や簡単な挨拶などを見に来た高校生たちに教えることにした。武漢大学の日本人留学生たちも6人応援に来てくれた。
 驚いたことに老いも若きもけっこう興味をもってくれるし、中年のお医者さんが20年前日本語を勉強しましたよと懐かしそうに話されたり、70を越すであろうお婆ちゃまが子どもの頃覚えた50音をすらすら読まれたり、高校生たちは日本のアニメを沢山見ているのでいろんな言葉を知っている。ただ去年の抗日戦争ドラマの日本人がしゃべる汚いことばも中にはあり、それではなくてこちらを覚えてと美しい日本語の音に耳を向けてもらった。2年生も手伝いに来てくれだが、さすが1年の差は大きい。じつはこの活動は1年生が中心にやる仕事。ある程度1年生に任せていたら、武漢大学留学5年の日本人学生会長Kさんを悩ませかねないことにもなっていた。あわてて、一から見直し、上記の企画としたのだが、嫌な顔ひとつせず、日本の写真を貸し、新来の学生に声をかけ、誘って来てくださったKさんの姿に頭が下がった。こんな姿に励まされ、私も黙々とやっていける気してくる。Kさん、本当にありがとうございました。
 夜メールボックスを開けると馴染みのない名前のメールが来ていた。
「わたしは今日お昼に行った高校2年生です。一つの国をよく理解するためにはその国の言葉を学ぶのが一番だろうと思っています。来年是非受験したいと思っています。…」私の連絡先を聞いて帰った子が二人いたけれどどちらかだ。
 種をまく仕事。お昼を食べずにいっしょに頑張ってくれていた2年生にそういったけれど、PCを通して、種に水をやる姿が見えた気がした。