河の向こう岸

昨日の秋雨が上がって、青空の一日になった。

今日は授業がない日で、漢口に行く用事もでき、午後はタクシーに乗り込んで、街や新しく出来た道やトンネルにいちいち驚きながら、長江を渡った。

用事を終えて、中国人の友人の新居にちょっと寄る。黄埠路というモノレール駅の近く、おしゃれな武漢天地にも歩いていける新しい高層マンションだ。


植え込みや敷石、中庭部分もきれいに作られていて、見上げれば30階建ぐらい。遠く空に向ってそそり立つマンション群。東京だったら、億ションだろうという雰囲気。
が、見るとエレベーターホールの隣の小さな管理人室控室の様な空間で、お婆さんたちがマージャンをしている。マージャン、トランプどこででも見られる余暇の過ごし方。「億ション並み」に越してきても、老人たちの服装も、生活感も変わっていない。まるで宝くじにあたって突然、立派なマンションに来ましたというような、お年寄りたち。
後ろの豪華な高層は合成画面の背景に過ぎないかのよう。

友人とエレベータを待っていたら、2つあるエレベーターの真ん中の壁に、張り紙があった。
−10月某日、何時ごろ、階上からごみを投げ捨てた人がいます。スイカの皮や、魚の頭など生ごみですが、高い所から落とすと下を歩いている人がけがをすることがありますので、決して投げ捨てないでください。今後そういう行為をした人は…

と言った内容。
入れ物が変わっても、人は急には変われない。

エレベータに乗り込むと一人のお婆さんが乗ってきた、ぶつぶつ独り言を言ったり、適当な京劇の歌を歌ったりしている。なんだか「日本人」と聞こえたので、日本人と気付かれたのだろうかと思うと、
「日本人がすてたのさ」と。

あらあらあら。秋雨が降るのも日本人のせい、ごみが降ってくるのも日本人のせい?

親切な友人が「あのお婆さんは、教育を受けてないのよ。デモにいったりする人たちもそう。」と言っていた。

出がけには安倍さんがなんとか神社へというニュースが流れていた。お婆さんや、単純な青年たちの目にどう映るか想像することは簡単だ。溝や亀裂が修復されることもなく、中国を離れていく企業などもあるだろうな、と思う。

帰り路、取り壊されて、青い囲いの続く街になってしまった、武漢大学の正門一帯を通り過ぎた。

青空も、色づき始めた木々も、秋の日に照らされた長江も、絵葉書のような船も、簡単な店の並びも、人も犬も…

カメラを持って行きながら電池を切らしていたので、
私の見たものは想像してみてくださいね〜(笑)