いってらっしゃい&おかえりなさい

武漢大学卒業生のK君がいよいよ日本留学をひかえ、会いに来てくれた。武漢を離れ、内モンゴルで大学の先生をしているお姉さんのところ、そして遼寧のお母さんの所に寄り、日本の東北大学へ留学する。
中国に来たばかりの年に彼の先生たちと黄山に一緒に登り、その後も時折やってきては留学の相談にものってきた。それは、おそらく武漢で出会った学生たちの中で一番、「学者向きな人」であるからと、ご縁というものだろう。

餞に外でご馳走した。

元気でね、しっかり勉強してください、次は東京か仙台ね。などと言って別れ、一つの旅立ちを見送って家に戻ると、レインコートを脱ぐまもなく、部屋のドアを叩く音がした。

どなたですか?

怪しい男性の声。チェーンをつけてそろそろ開けてみると。TADA―とばかり、現れた顔は10ヶ月のタイでの中国語教師派遣を終えて本日戻ったという中文系院生のYJ君だった。朝のバンコックは暑かったという。
恋恋不舎。生徒たちともタイの生活ともすべて別れがたく、引き裂かれる気持ちで戻ってきたのだ。わかるなー、その気持ち。その上、春節間近に、育ての親のお祖母さんが亡くなっている。家に戻れば、そんな現実にも直面しなければならない。

「おかえり」
私は精一杯心を込めて言った。まずは、よく帰ってきたね。お疲れさん。

ある門出の晩、戸口に戻ってくる人あり。昨日は不思議な3人3様の人生の一日だった。


3月13日の楚天都市報一面に華中科技大生帰国記事が掲載され、YJ君も
バンコクは様々な顔を持った都市。豪華な貴族の屋敷があるかと思えば、板張りのバス、輝く宮殿に、いたるところにあるお寺・・・
タイの教育はしつけを重んじ、大学入試を控えた高校三年の女の子がのんびり刺繍を習っていたりする…」と体験を語っています。