お姉さんの力

心地よいお天気の午後、大学のネットの使用できる博士用宿舎を借りればと、同学wさんが、付き合ってくれた。
ところが、まず行った先、日頃の私の生活では行くことのないディープな管理事務所、ここは鍵の管理しかやってないから、どこそこへ行けと言う。で、自転車に乗り換えて、そこへ行く。
すると受付のお兄さんが、ここは違うから、表にでて門を入って…と。で、表に出て門をくぐり、受付で聞くと、面倒くさそうに「ここにはいない、出て左の建物」。
出て左の建物に行くと2階だという。2階に上がると、「それはもう一人のTさんで、その人なら表に出て」・・・。目的の人に辿り着くまで7か所7人及び一人の通行人のおばさんにも尋ねた。
しかも、これで済まない。振り出しの鍵の部屋に戻れるまで、まだ4工程ぐらいありそうだ。明日にづつく遥かな旅。
 ところで、道々wさんが、足元が悪いから自転車で転ばないでとか、あわてないでとか、何かと心使いをしてくれる。そしてジャケットのフードが裏返ってると直してくれたり、果ては部屋に入る前に、私の前髪を直してくれたりするので、もしやと思い、尋ねてみた。「そう、私は3人弟と妹がいる長女なんですよ」とのお返事。
私の方はいつも人生のどこかで姉や友達に面倒を見てもらったり、助けられたりしてきた幸せ者。永遠の末っ子型なのか。でも髪の毛まで直してくれる、私よりどんだけも若いwさんのお姉さんぶりもなかなかである。あんまり可笑しくて、ククッと笑っていると、ふと、懐かしい人のことが思い出されて、そのあと心の中でホロリときた。
 並木道を自転車を押しながら歩くと、大学の外のアパートにはくれぐれも住まないようにとwさんは言う。先ごろ結婚して外に住んでいるwさんだが、洗濯ものを干したところ「布団に水がかかって濡れた」と、下の家の人が血相変えて上がってきたそうだ、それも一家全員。え?一家全員?というと、お年寄りから小さい子まで11人踊り場まで埋まったのだそうだ。
 そんな時は相手が全部言い終わるまで黙って聞くといいんですよ、言い終わるとすっきりして、全員で帰って行きましたから、と。お見事、お姉さんの力。