「長江哀歌」と2人の少女

昨日、賈樟柯監督映画「長江哀歌(エレジー)」(中国語原題「三峡好人」)を見てきた。2006年ベネチア映画祭金獅子賞をとった作品だそうだ。
三峡ダム近くの町へ16年前逃げ帰った妻子を、山西省から探しに来た男サンミンを中心に展開していくドラマで、歌われる馴染みのある流行歌、またさまざまな現代中国を浮き彫りにする「道具」が散りばめられている。が、ドキュメンタリータッチでもあり、張芸謀や陳凱歌監督の華やかな中国映画を見ている人には、画面にしてもストーリーにしても見やすくはないかもしれない。わたしは、いつも世界の片隅でこんな人が生きているんだと感じられる映画が好きなので、そんな意味では印象に残る映画の一つだ。白帝城そばで見た解体されるビルのある小さい村のことを思い出した。東京の上映のあと、いろいろな地方へ行くようです。上映スケジュールはこちら
単館もの映画が好きで休みの日にはよく行ったが、久しぶりに東京のこうしたシネマの心地よさも味わってきた。それと、渋谷から京王線に乗ったとき出会った2人の女子中学生が印象的だった。
つり革を探そうとして、私は彼女たち間を割ってしまった。「ごめんなさい」というと、うつむきかげんで、2人はお辞儀をしながら「いいえ」と笑顔の応答。きれいに磨かれた黒い革靴、紺のコート、チェックの制服のスカート、小豆色のマフラー、お嬢様学校の品格が漂う。「かわいい制服、学校はどこ?」と聞くと、「○○です」とまたもや折り目正しく答える。名門女子校であることが名前からわかる。
こうした女子校のしつけ、教育の高さをつくづく感じて、思わず「良い子のいる学校なのね」というと、「いいえ」とまた伏し目のお辞儀。わたしはまるで日本にハジメテ来た外国人のような気分で驚きながら彼女たちの振る舞いを見ている。
 下北沢で彼女たちはまたもやきれいなお辞儀をしてくれ降りていった。そして「良い方だったぁ」と言っているのが聞こえてきた。わたしは小さい天女の花園に紛れ込んだような気持ちになった。
 よほど中国で殺伐とした目にあっているのかな(笑)。上海などでは、東京はすでに勝ちを譲るべきというような豪華なビルが立ち並んでいるが、人の対応やソフトの面ではやはり東京にははるかに及ばないだろう。