Gさんが語ってくれたこと

農村ツアーの帰り、バスを降りて新鮮な空気が吸いたかったので、漢口を少し歩くことにした。中国人参加者の男性Gさんが、分かるところまで連れて行きますよと言ってくれ、長江の川岸の公園、江灘(ジャンタン)を一緒に歩いた。向こう岸は少し霞んでいるが、花が咲き、緑が目に優しい。
Gさんは今年30歳、今、武漢イスラエル系企業に勤めている。川風に吹かれながら、興奮気味の中国語で(だから聞き漏らしたこともある)、7年前、JICAの研修生として4ヶ月日本に来たことを話してくれた。その日本での4ヶ月が彼の人生を一変させたそうだ。それまでの彼は有名大学出ではなかったために、月600元の給料に甘んじ(北京で働くここの卒業生は4000元、武漢でも1500元以上もらっているだろう)劣等感の塊だったそうだ。
 お母さんの勧めでJICAの試験を受け、英語ができたためパス、沖縄の研修所でコンピューター技術を学んだ。先生たちは常に励まし知識とともに自信を与えてくれたそうだ。帰国後、武漢の「そごう」デパートの立ち上げ時の電算機部門に就職、新しい一歩を踏み出した。その後の転職の経緯や現在の給料などは特に聞かなかったが、来月はアメリカとイスラエルに出張、等身大の自信をつけた国際人だ。600元のお給料のときなら参加費230元はかなりきつかっただろう。
 日本へ行ったことのある人の日本人への親日度は高い。日本が何か力を与えられたなら嬉しい。子どもにしろ、大人にしろ、日本がこうした力を与えられる国であると印象も変わってくるだろう。
 この日、お金をもらえた半分の子どもたちはどう思っただろうかと尋ねてみたら、今回の企画は市政府だし、お金もさることながら政府や外国人が自分たちに関心を持ってくれたということを喜んでいると思いますよと言っていた。確かに校長先生の話でも政府のテコ入れと日本大使館への援助申請で夏には運動場が整備される予定だということだし、食堂と寮の改築費も集めていて、光が当たり始めているようだ。中央政府も農業税の廃止、農村学生の学費減免など、特に貧困の家庭の子どもには「両免一補」という政策を取っているそうだ。少しずつでも農村の学校の状況が好転していく兆しはあるだろう。
 江灘が切れたところで偶然、今回の主催者側の女性担当者Zさんに出くわした。今日のイベントは“完美(Perfect)”だったと大変満足の様子。
 つい日本と比べて一足飛びになんとかならないかと思ってしまうが、それは無理な注文なのだと思った。Gさんは共産党一党支配では様々な角度からの政策の点検や、政策効果の達成度が分からずもっと他の政党も存在すべきだとしながらも、やはり様々な問題を解決するには今後10年、優秀な政治家の力に期待すると言っていた。
 Zさんのお仕事振りを拝見するにつけても、中国の大人、武漢という土地についてもっと様々な角度から知りたいと思います。