始動―歯医者に行く

帰国していくつもりだった歯医者に行ってきました。仕事はあと、試験の作文を評価し、1〜3年生の成績をつければ終わる。
華中師範大学近く、武漢大学口腔医院。実は、来たばかりの時、奥歯にかぶせた物がとれ、痛くないとはいえ、約1年も放っておいたので、さすがにまずいと反省。麻酔を使わず治療したとか、怪しい歯医者の新聞記事に、クワバラと思ってはいたのだが、中国とてちゃんとした歯医者さんがいない訳がないし、章さんの彼氏にも「日本の潜水艦も中国の潜水艦もそれほど違いが無い、ある面では日本が進んでいるが、ある面では中国が進んでいる」と聞いて(笑)、医療も含め科学技術水準はそんなところだろうと思うのだ。
 歯医者は日本でも苦手、院生がついて来てくれた。受付で初診料を払うときからシステムの違いが現れる。見ていただく先生が4ランクに分かれ、一番上の専家先生の受診料は31元、次が19元、次11元、そして普通先生が6元。(1元の端数はカルテ代)。やっぱり31元払って腕のある先生にお願いすることにした。
 4階の修復科に行くとほとんどすんなり入れ、混んでいない。個々の診療台が日本よりゆったりとしている。来られた先生はややお年の女性だが、「教授・主任医師」―31元だとこうなんだと驚く。地獄の沙汰もという感じがしないでもないけれど、意識的に選択できるのは悪いことでもないように思う。
 この歯は何度も治療してきて状態を知っているので先生のご説明もよく分かる。日本でやった根の治療が不十分で、まず保存科で土台の根管をやり直すことになった。いつの間にか新たにお出でくださった中年スマートなZ先生が、あれれ、日本語ですね。大分医科大学で10年研修されていたということで何の心配もない日本語で対応してくださる。3階の保存科にまで付いてきてくださり、保存科の先生に説明してくださるので、武漢在住の皆さん歯が痛くなっても大船です。
 ここでお昼となったため、保存科に午後2時に来るよういわれ、院生と外にお食事にいく。雨も振り出し、午後は一人で何とかなりそうなので、食後は分かれて大きなスーパーで歯ブラシを買ったり時間潰しをする。
 2時に行くとZ先生がまた保存科で良い先生をと頼んでくださり、若手のG先生のまな板に載ることになった。そこから2時間半、神経は以前抜いてあるのでほとんど痛くは無いが根の治療のやり直し。他の先生方も見に来て「日本の治療もたいしたこと無いな、アメリカと同じぐらいだ」と覗き込む。根の一本が硬くて細いからと休みを入れて、次は「マイクロスコープを使って治療します」と大掛かりな拡大鏡が出てくる。するとまた2人ほどが見に来られる。大学病院の一つの役割は教育機関でもあるということだから、どうぞどうぞ。
 日本との違いは「はい、口をゆすいで下さい」ではなくて「吐一下(吐き出してください)」でゆすぐことは前提とされていない。紙コップ一杯の水が用意されるがそれが無くなっても継ぎ足してくれない。そして、起き上がるにも自動ではなく、腹筋を使って起きなければならない(笑)。患者へのソフトさではやはり日本が優れているかもしれないが、それでも2時間半の長帳場、熱心にやっていただいたおかげで、治療自体は来週1回来れば済むことになった。払った費用は400元(5,600円)ぐらい。これは勤める大学の保険では出してくれない。Z先生が日本の保険で少しカバーしてくれるはずですよと教えてくれる。
 支払いもカードが使える。日本でもカードでの医療費の支払いは始まったばかりではないだろうか。なんといっても違いはカルテを患者自身が管理すること。A4サイズの薄いノートです。これが診察券代わりにもなっている。
朝10時前にでて、帰り着いたのは6時近かった。うん、ちゃんとした病院を選べば大丈夫というのが感想です。今夜の天気予報では雪交じりの雨になるとあるが、これからどうなるのかな。