謝晋監督と幾米

文革時代を描いた映画として有名な「芙蓉鎮」の監督である謝晋監督のインタビュー記事を読んだ。(「生活報」05.7.27)今年82歳とのこと。彼自身、文革中にブルジョア的と批判され、二人の息子もその幼時のあまりにも苛烈な虐待が原因で精神障害になったということは聞いていたが、インタビューで控えめに語られた家庭の悲劇はそれに止まらなかった。老父の睡眠薬による自殺、その後の老母の飛び降り自殺。「母の遺体を抱いて、部屋に上がると、訳がわからぬ二人の息子たちが、なおも笑っていた」と。 その瞬間の嘆きの深さはいかばかりであったか。立っても居られぬ幻惑を感じられたことだろう。
文革時代の悲劇はまだ十分に語られていないと思う。
 幾米の記事は「思惟与智恵」05.8号で読んだ。
台湾の絵本作家・幾米(ジミー)の絵本は大人の鑑賞にあまりにも堪えうる。1999年に発表した「向左走向右走」がベストセラーになり、映画化もされ、人気は欧米にも広がっているが、その彼も1995年に急性白血病になり、死を見つめたことが創作への地殻変動をもたらしたようだ。それまでの彼は自分の描くキャラクターたちを鞭打ち、名声への道具としてしか考えていなかったという。生き返った幾米は全ての愛を傾注して、自分の描く人物たちに命を与え、活き活きを動かすようになったという。
日本でも出版されているようですから、ぜひ本屋で探してみてください。