口伝隊のこと

新国立劇場午後1時。


舞台には14脚の椅子。夏の学生服姿の男女が交互に座り、持ち番の箇所が読まれ演じられ、ギターの演奏者の緩急ある伴奏で劇が進められていく。

友人が行く予定が都合がつかなくなったからと朗読劇のチケットを送ってくださり、昨日ありがたく見てきました。今年亡くなった井上ひさしさんの作品「少年口伝隊一九四五」です。

「広島がヒロシマになった日」、つまり8月6日の原爆投下の直前の夏の日のこととそれから。爆撃機1000機分の原子爆弾リトルボーイの破壊力やその日の町の惨状。輪転機の壊れた中国新聞社の新聞報道に代わって口伝えでニュースを伝える3人の少年を中心進む物語は、まるで語るドキュメンタリー、耳で聞くドキュメンタリー。

パンフレットには井上氏がイギリスの歴史学者から借りて繰り返し語ったことばとして
「記憶せよ、抗議せよ、そして、生き延びよ」
と書かれています。高等数学の理論「バタフライ効果」を引用して一匹の蝶が対岸に嵐を起こすとが可能だとも。



そして一つハッとしたこと。
昨年、中国人の先生に「南京!×3」(検索にかかるといやなので映画名はやや変えてあります)を見たか、日本人に是非見てもらいたい映画だ、といわれたときに、またか、そんなことは知っていると思ったこと。そのことを今一度、考え直したくなった。
たとば、誇張された残虐性、事実にそむく攻撃的な内容、ある政治的な目的のための日本批判であるならノーといいたいが、こうして日本の戦争で亡くなっていった人たちの叫びを聞くべきなのと同じように、
戦争の犠牲になった中国人の人たちの叫びも聞くべきではないか、戦争で亡くなっていった中国人の叫びを日本人はどのくらい聞いてきたのだろうか、というそんなことを思った。

中国で働く者として「もう一回あなたのいうことに耳を傾けよう」、とそんな気持ちになった時間でした。