巴山夜雨

おとといの夜、池に漲る雨音を聞きながら、日本語学科の先生方とお食事をした。「巴山夜雨」李商隠の詩では秋の池、四川のあたりのことであるが、その風情がこの句を思い出させた。
雨に濡れる池、酒家の賑わい、賑わいの中の静けさ。

この日午後は4年生の卒論テーマ発表会で3時間休みなしだった。そのあと日本語学科の先生たちでお食事に行くことになった。が、車で外に行くとは思ってもいなかった。
東湖に近く、農家料理のお店も何軒か集まっている。「農家小院」って何と訳したらいいのでしょうと聞かれて、「農家の庭でしょうか」と答えたが、行ってみると、立派な風情あるレストラン、いくつもの部屋に分かれていて、石煉瓦と木組みで西北の大農家風で回廊があり、灯が点り、雨に濡れ趣を増している。お料理も数年前からのはやりのザリガニやアヒルのスープ、そして牛蛙、山菜など野趣あふれるもの。だが味付けはかえって上品。
お勘定は研究室もちでで600元だった。大学の中ならおそらく300元もあれば済みそうな品数。どことなく形容矛盾のようだが「高級田舎料理」とでも言ったらいいか。
評判がよいらしく、車がたくさん止まっていて、バスでも乗り付けてくる。予約をしないとかなり待たされるそうだ。経済危機は中国の経済成長にも影を落としているはずだが、お金があるところにはお金があるものだ。
車、家、豪華な食事、骨董、旅行…、最後は豪華なお墓らしく、先日、豪華なお墓「天価墓」がニュースにもなっていた。広東省のある村では書記が母親のために始皇帝募かと思うようなお墓をたてている。一番平等であるべき社会の天地の差。

何か眩暈に似たものも感じながら、先生方の談笑に耳を傾けつつ、李商隠の聞いた夜の雨はかくありしかと池の上に降る雨を見た。